太田市 土蔵のリフォーム工事
1.修復工事の内容
屋根:屋根瓦の補修のケラバ(左右両端)部分に垂れが無くしっくいを盛上げて雨が回り込むのを防ぐ方法から、垂れが有り耐久性のある本葺き用ケラバ瓦に交換。また、下屋のビニール波子(一度改修されている!)をカラー鉄板の平葺に修復。(瓦葺きにすると取り合い部分が鼠返しと言う突起部分より上になるため鉄板平葺きだったと推測)
樋:カラー鉄板製の軒樋と縦樋を取り付ける。ただし、樋受け金物は既製品が無い為、樋の勾配と打ち込みの支持深さに合せ特注品で対応。
壁:屋根の妻側部分が落ちてしまい損傷のひどい所は間渡し竹を除去し、取り付け直し下げ縄取り付けからはじめ、荒壁塗り、砂しっくい、砂摺り、砂刷り、砂しっくい、しっくい大直し、しっくい仕上げ3回行います。
基礎:大谷石積の基礎は多少の劣化はありますが修復の必要はありません。ただし、下屋袖壁部分の柱下の栗土台に腐食が見られる為、栗土台を入れ替えます。
2.土蔵の修復(渡し竹及び下げ縄取り付け)
外壁を修復する為、そして工事中雨から守る為、外周部と屋根部に足場を架けました。写真には写っていませんが既存瓦屋根の上に波板の屋根を葺きました。なお、蔵の前に写っている四角い囲いは、土と藁スサ混ぜて寝かせるところです。
傷んだ部分はしっかりと取り除きます。
渡し竹と下げ縄を取り付けました。
3.土蔵の修復(荒壁塗り1回目)
いよいよ荒壁塗りになります。
塗るというより泥団子をぶつけるという方が良いかも知れません。
写真のように土を丸めて渡し竹の隙間に投げ込んでゆく感じです。
次々に泥団子を投げ込みますが、下げ縄だけは埋まらないように引き出します。
傷みのひどいところを、それほど痛んでいないところを同じ状態にするための荒壁の一度目はここまでで表面にキズを付けて終了です。
4.土蔵の修復(荒壁塗り2回目)
約5ヶ月ほど乾燥して荒壁塗りの2回目です。
それまでの間、痛みの少ない箇所の補修や壁部分のクラック補修など行っていました。
今回は蔵の特徴になっている妻側屋根付近の壁が斜めになっているところに定規を付けて完成に近い形に整える荒壁塗りです。
段を真直ぐにする為、定規を当てて荒壁を塗り終えます。
ここでも縄や藁を使い割れないように、剥がれないように工夫が見られます。
また、直線が直線になるよう水糸が張られています。この状態でまた少し乾かします。
約10日ほど乾燥しまた荒壁を塗ります。この作業が終了すると形は完成とほぼ同じです。
土蔵の修復(しっくいの仕上げ)
壁の仕上げが始まりました。
ねずみ返しと言う壁中間にある突起は中塗りの状態で壁の仕上げ後に仕上げます。
瓦の下はしっくいを塗ります。万が一雨が瓦を抜けてしまった場合土では水が浸み込んでしまいますが、しっくいを塗ってあれば吸い込まず軒先に流れていくはずです。
傷みの原因として一番考えられたのが屋根妻部分の瓦から雨を軒先だけでなく壁に伝えてしまったと思われます。それは、昔の瓦の形状は左の写真の瓦がもう一列並んだものに、しっくいで土手のようなものを付けていました。
しかし、少し横殴りの雨は瓦の下に回り壁の方へと流れ込んでしまいます。
それを解決するのが下の写真の新しい瓦で端が垂れ下がっている物でケラバ瓦と言います。
ケラバ瓦と壁の部分を下からアップにしました。
横から殴りつけた雨もこれなら壁に回らず下に切れます。